• テキストサイズ

【黒バス:R18】解れゆくこころ

第79章 邂逅


「みわ、何食べる?」

「……」

練習後、かなり強引に連れ出されてしまった。
連れて来られたのは、駅前のビル。
どうやら、上から下まで全てテナントは飲食店のようだ。

ラインナップはチェーン店から外国料理まで、様々。
困った……。

「あの、私カフェで十分なので、すぐ帰るので」

「だって俺腹減ったもん。カフェとか辛いんだけど」

「うっ」

確かに、1日運動をして来た人に、ちょっとお茶しましょうは酷すぎる。
丁度夕食時、ビルから立ち上るようないい香りが、お腹を刺激する。

「じゃあいいよ……カフェ行く? 俺が耐えればいい話だもんね」

「わ、分かりました……お店はお任せします」

「オッケー」

まるで私の返事なんてお見通しとでもいうような速度で、彼は私の手を引いた。

その力強さに、思わず全力で手を引っ込めた。
あの時の引かれ方と、似ていたから。

「みわ?」

「あ……すみ、ません」

どくん、どくん
心臓が、騒ぎ出す。
彼に触れられた所が熱を持って、そこから熱くなった血液が全身に回っていってしまうような。

涼太に触れられる時とは真逆。

大丈夫、意識しすぎだ。
ご飯を食べに行くだけなんだから。
思い出しちゃだめ。忘れる。忘れる。

こういう時は、意識して息を吐く。
涼太にいつも助けられたの、忘れちゃだめ。

深く息をつくと、息苦しくなってきた呼吸が、戻ってきた。
大丈夫。大丈夫。

「みわ? どうした?」

「あ、すみません大丈夫です。あの、出来れば低層階のお店でお願いしたいのですが」

普段は出来る限りエスカレーターや階段を利用しているけれど、ひとと一緒だとそうはいかない。

出来るだけ、エレベーターに乗るのは避けたい。
ワガママなのは、十分分かっているのだけれど。

「じゃー、2階のお好み焼き屋にしよっか。階段だけどいい?」

「はい」

彼は何も聞かず、階段を上り始める。
いつまでも自分を取り巻く過去のトラウマに絶望しながら、私も階段を踏みしめるようにして上った。

/ 2455ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp