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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第79章 邂逅


翌日は、朝から体育館に居た。
選手の朝のモチベーション、ウォーミングアップで気持ちも身体も温まるまでの速度、チーム内での雰囲気……気になる事は全てノートに書き出す。

私だけに任されている仕事はない。
あくまで、マクセさんの補佐だ。
彼から指示された事を、実行するのみ。

でも、だからと言って指示を待つだけでいるつもりはない。
折角、生でこうしてトレーナーの仕事が見られて、チームに密着していられるチャンス。

ひとつぶのチャンスも、逃さない。

「おはよう、みわ」

「わっ!!」

集中しているところに突然後ろから肩を叩かれて、飛び上がって驚いてしまった。

驚いた選手達の視線が集まる。

「も、申し訳ありません!」

練習の邪魔をしてしまった事を謝り、振り返ると目の前に居たのは……閑田選手。

昨日も思ったけれど、話す時の距離が近い。
思わず後ずさって、距離を取ってしまう。

「ねえ、俺の事思い出してくれた?」

「あ、あの、それが……」

どうしよう、こんな練習中に込み入った事を話せない。
簡単に説明出来る言葉はあるだろうか。

……正直に言うしかないよね、覚えていないって。

「ん? 何?」

「申し訳ありません、言いにくいのですが」

「おい閑田! 戻れ!」

横から飛んできたのは、主将の声。

「ハイハーイ。ごめん、呼ばれちった。じゃさ、今夜メシ行こうよ、約束!」

「あ、あの、ちょっ」

私の返事なんか聞く事なく、ひらひらと手を振って彼は行ってしまった。

……でも、丁度良かったのかな。
この調子じゃお話する時間もないままだし、いつまでも覚えてない事をお伝え出来ないままなのも失礼すぎる。

お話したら、すぐ帰って来よう。
ご飯とかじゃなくて、駅前のカフェでもなんでもいい。
少しだけお時間貰えれば。

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