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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第78章 交錯


「あ、これ……ごめん、早く渡せば良かったんスけど。みわの顔見たら忘れちゃってたっスわ」

「なぁに?」

涼太がそう言いながらボディバッグから取り出したのは……

「カイロ……」

貼るタイプの使い捨てカイロだ。
冷え性の私にとって、冬には必須のアイテム。
流石に春めいてきた最近では、使ってなかった。

「腰とかお腹に貼るといいって、姉ちゃんが言ってたからさ」

……そうだよね、涼太ってお姉さんが2人もいるんだもん。
普通よりも詳しいよね、こういうことも。

「ありがとう、使わせてもらうね」

ありがたく使わせて貰って、少しでも痛みを和らげよう。
……勿体なくて使えない、なんていうのは彼の好意を無下にするだけだし。

やらなきゃいけない事、いっぱいある。
怠いからって寝てばっかりいられない。

そう決意したのを嘲笑うかのように、下腹部を鈍痛が襲う。
ぎゅーっと、締め付けられるような痛み。
波のように、大きなうねり。

「……っ」

さっきまでよりも波が大きくて、思わずうずくまってしまった。
いつも飲んでる薬も、何故だか今日は全然効かなくて。

ギリ、と歯を食いしばっても痛みは消えていかない。
鳥肌が立つ。

「みわ」

優しい声で、それだけ聞こえて……身体が、浮いた。

「っ!?」

「横になった方がいいスわ」

あっさり横抱きにされた私は、抵抗の一言すら出ないまま、部屋へと連れて行かれる。

音も無く下ろされると、まるで家主のような手際で布団を敷き始めて、またあっという間に寝かされて。

「あ、あの、ごめんね」

「大丈夫? 女のコは本当に大変っスね。やる事多いかもしんないけど、早く寝るんスよ」

頭を撫でる手は、あんなに力強いプレーをするとは思えない程優しくて。

「うん……ありがとう」

さっきから、ごめんねとありがとうしか言えてない。
もっと、お礼の気持ちを伝えたいのに。


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