第78章 交錯
「あの、ほら、運転して来てくれる事が多いでしょう、だからコーヒー、あった方がいいかなって」
「インスタントだとお手軽なんだけど、やっぱり味はドリップの方がいいって言う人もいて、だったら選択肢が増えた方がいいかなって」
「あの、保存もきくしね、買っておく分にはいいかなって」
次から次へとみわの口から出てくる言葉たち。
珍しく早口になって、まるで言い訳みたいな。
「そんな慌てなくていいのに。別に悪いコトしてる訳じゃないっスよね。お礼言うのはこっちっスわ」
その慌てぶりが面白くて、笑いが止まらない。
「じゃードリップにしよっかな」
個包装になっているパックを開けて、取っ手のようになっている部分をマグカップのふちに引っ掛けて、お湯を注ぐ。
立ちのぼる湯気が、いい香り。
あー、コーヒーアロマに癒される。
「みわは何にする?」
「あ……じゃあココア、お願いしてもいいかな」
「りょーかい」
確かココアって、冷えに効くんだったよな。
マグカップをふたつ揃えて、ダイニングテーブルへと運んだ。
「いただきまーす。そういや、桃っちにも会ったんスよ」
「そうなの? さつきちゃん、メールでしか話せてなくて……今度時間作って会おうねとは言ってるんだけど」
「なんかさ、青峰っちとのこと、聞いてる? 桃っちの家に青峰っちが結構出入りしてるみたいでさ、付き合ってんのかなって」
「青峰さんとは、お付き合いはしていないみたいだよ。ただ、今後の事、悩んでるみたいだから相談してるのかも」
みわは、驚いた様子も無くそう言った。
桃っちは、やっぱりみわにはある程度話してるみたいだ。
「今後の事?」
「さつきちゃん、大学休学して青峰さんについて行こうかって、そう考えてるみたいで」
「……はぁ!?」
え、ついて行く?
アメリカに!?
付き合ってもないのに!?
それじゃまるで奥さんじゃないっスか!?