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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第78章 交錯


「お疲れ様。わざわざ寄って貰っちゃってごめんね」

約40分後。
玄関先に出て来たみわは、黒のルームウェアを着ていた。
……さっきの桃っち宅でのワンシーンが思い出される。
ごめん。
ダルいだろうに、着替えた?
ホントごめん。

「いや、ごめんはこっちのセリフ。起き上がってて平気なんスか?」

「うん、大丈夫。寒いから入って」

「いや、オレもう、すぐ帰るから。顔見に来ただけなんスよ」

「でも……折角来たんだからお茶くらい飲んで行って。寒かったでしょう」

いつもより少し低めの、ハリのない声。
小さく肩を震わせてくしゅんとクシャミをした。

「涼太、ね、寒いから」

「……ごめん……」

玄関のドアを閉めて足元を見やると、みわの靴しか無いことに気付く。

「あきサン、留守?」

「うん、彼氏さんとご飯食べに行ってるんだって。終電までには帰るって言ってたけど」

「ん、そっか」

みわをひとりにしとくのも心配……だけど、流石にこの状態で長居は出来ない。

リビングに向かう足取りも、いつもよりも重たそうに感じる。
小さい背中が更に小さく感じる。
玄関で見た顔は、真っ白だった。

こんなのが毎月来るって、地獄じゃねえスか。
なんか、大変だよなホント……。

みわはリビングへ入るなり、エアコンの電源を入れた。
そのままキッチンへと向かう。

「コーヒーの方がいい?」

「待って待って、オレが淹れるから」

「えっ」

慌ててみわを捕まえて、席に着かせた。
いきなり押しかけておいてコーヒー淹れて貰うとか、ないっしょ!

「大丈夫なのに……」

「えっと、コーヒーは……」

前に教えて貰った棚を開けると、あった。
……けど、種類がだいぶ増えてる。
インスタントも、よくスーパーで見かけるヤツじゃなくて、珈琲専門店が出しているフリーズドライのものだ。
他にも、ドリップタイプもあるし……

「あきサンって、コーヒー飲むんだっけ」

「たまにアイスコーヒー飲みたくなるって言ってるよ。でもお店で飲むのが好きなんだって」

「じゃあこの品揃えは、オレのため?」

返事がなくなった。





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