第78章 交錯
なんで、電話ってこんなにドキドキすんだろな。
この繰り返される電子音、こいつのせいか。
『……もしもし、涼太?』
いつもよりも多く鳴ったコール音の後……
明らかに、この電話で起きたって声。
まずった。
「ごめん、寝てた?」
『大丈夫、少し横になってただけだよ』
これは、思ったより悪そうだ。
「みわ、今日黒子っちに会ってさ、みわが体調崩してるって聞いたんスよ。具合、どう?」
僅かの間。
黒子っちの名前を出すか迷ったけど、ウソはつきたくないし。
『あ……そう、なんだ。ごめんね、風邪とかじゃないから大丈夫』
「ホントに? 変なモン食べた?」
『ううん、そういうのでもなくて……』
風邪とかじゃない、ってなんだ?
腹壊したとか?
色々想像を巡らせるんだけど、そもそも健康優良児のオレに病気の知識のストックは殆どない。
そんなに言い辛いコトってあるか?
と考えて……あった。
『あの、えっと……』
うちのねーちゃんも散々苦しんでた、アレか。
子宮を雑巾絞るみたいにした痛さって言ってた。
ついでに、男のオレには一生分かるもんか、今は見てるだけでイラつくからあっち行けってクッション投げられた。
「あー……女のコは、大変っスね」
『あ……大丈夫、お薬効いてきたみたいだし』
やっぱり、正解。
お見舞いに……なんて思ってたけど、生理痛じゃ、そういう感じじゃないよな。
むしろほっといてって感じだろうか。
時間しか解決してくれない痛みって体験した事ないから分かんないっスわ……。
今日はこのまま帰った方が良さそうな気もするんだけど……。
「今日さ、全日本の集まりがあったから東京に出てるんスよ。結構近くに居るんだけど、ちょっとだけ顔出していいっスか?」
こう聞いたら、みわは断れないの……分かってる。
でもやっぱり、少しだけでも会いたくて。
ごめん、みわ。
顔見たら、帰るから。