第24章 引越し
黄瀬くんはドヤ顔で私のオムライスに何かを書き始める。
「出来たっス!」
オムライスにはでかでかと
涼太♡
と書かれていた。
……
「えっと……」
「え、反応薄くないっスか!? オレの全部を食べて♡っていうメッセージなのに!」
「いや、顔文字とかそういうのを想像してたものだから、正直リアクションに困って……」
「もー! マジメに困らないで欲しいっス〜!」
「あ、冗談……だよねそうだよね、ごめん、なんか真に受けちゃった」
「みわっち、真に受けたってどういうことっスか!? オレの全部を食べてくれるって事っスか!?」
近い近い顔が近いよ!
「ちがうってば! もう! 冷めちゃうからいただきますよ!?」
恥ずかしさを隠しながら、オムライスをひとくち取る。
文字が書かれてないところを。
「あっみわっち、ちゃんとケチャップのトコ取ってほしいっス!」
「なんか、キレイに書けてるから崩しづらくて」
「バシバシ崩して食べて欲しいっス」
……談笑する時間なのに、ホント、なんでずっとドキドキしてるの?
「オレの方にはみわっちの名前書こうっと」
楽しそうにみわ♡と書いている。
「さーみわっち、いただくっスよ〜……上からがいいっスか? それとも下からっスか? それとも右っスか左っスか〜?」
「た、ただのスケベオヤジか!」
「ひどいっス! みわっちが純粋すぎるんスよ! オレはこういう事ばっか考えてるって、言ったっスよね!?」
純粋……
昨晩の洗面所での行為を思い出す。
黄瀬くん、私、純粋なんかじゃないよ。
昨日ね、黄瀬くんのTシャツ使ってね、1人でいやらしい事してたんだよ。
こんな私知られたら、絶対幻滅する。
あんなみっともない姿、見られたら死ぬ。
「んんん、美味しい!」
「ほんとっスか〜! 良かったっス!」
お腹が空いていたというのもあって、ペロリと平らげてしまった。
「ご馳走さまでした……」
「お粗末さまっス、ソファで食休みしてて」
「いいのかな……ありがとう」
お皿を下げた後、ソファに腰掛けた。
温かいお茶を2つ持った黄瀬くんが、後からやってきて隣に座る。
「ありがとう。至れり尽くせりだね」
黄瀬くんが優しく微笑む。
その瞳の中に吸い込まれそうだ。