第24章 引越し
「じゃあ私、今日はそろそろお暇しようかな」
「えっみわっち、ご飯は?」
「引越したばかりで大変でしょう、またゆっくりお邪魔するよ」
「そんな〜! 今朝、材料買っておいたのに。無駄になっちゃうから、せめてご飯だけでも食べて行って欲しいんスけど」
う、そんな、捨てられた犬みたいな……。
「じゃ、じゃあ……お言葉に甘えてご飯、いただいていこうかな」
「やった! すぐ作るっスから、テレビでも観てていいっスよ」
そう言ってテレビをつけてくれたけど、全く画面に集中できない。
対面式キッチンになっているので、横を見ると料理中の黄瀬くんが見える。
目が合うと、笑顔で手を振ってくれた。
「あの……やっぱり手伝うよ」
「いつもみわっちには作って貰ってばっかりっスからね、たまにはのんびりしてて」
「……分かった……あり、がとう」
でも、この沈黙に耐えられない。
変な想像ばっかりしちゃう。
テレビを消し、ダイニングテーブルの所まで移動して、席に着いた。
「あれ、テレビ観ないんスか?」
「……テレビは、いいよ。黄瀬くんと話してる方がいいかなって。なんかお話しよう?」
これ以上1人で悶々としていたら、おかしくなってしまいそう。
黄瀬くんを見ると、顔がほんのりと赤くなっている。
「そんな事急に言われると……照れるっスね」
「え、あ、うん、そうだね」
しまった、余計気まずい。
「みわっち、合宿はどうだったんスか?」
良かった。バスケの話題なら変な妄想しなくて済む。
「うん……海常は元々皆、基礎能力が高い人ばかりだけど、1回目の合宿でかなりベースアップしたと思うよ。黄瀬くんで言うと」
「ストップみわっち、詳しくはコートで聞かせて! そっちマジメに聞いてると、焦げそうっス」
「あはは、そうだねごめん。……いい香り」
「ハイ、お待たせしました! 簡単っスけど」
オムライスにスープとサラダ付き。
すごく美味しそう。
「すごーいキレイに焼けてる! 美味しそう!」
「じゃあみわっち、ケチャップはオレがかけてあげるっスから!」
意気揚々と冷蔵庫からケチャップを取り出す。
ああ、よく顔文字とか書くやつかな?
「何書いてくれるの?」