第78章 交錯
ようやく上体を起こした黒子っちは、ペットボトルを渡すと小さくすみませんと言って、思い切り飲み干した。
「今日、赤司君と夕飯を一緒に食べましたよ」
「赤司っちと? 珍しいっスね」
「近くまで来たというので」
赤司っちとは……あの事件の後には結構頻繁に会ったりしていたけど、今ではたまにメールで連絡を取り合う程度になっていた。
赤司っちは、ずっとみわの事を気にかけてくれてる。
あの事件の時、みわを助けられなかったと、ずっとそう思ってるみたいで……。
何にも役に立たなかったのは、オレなのに。
……いけない、今思い出す事じゃないっスね。
彼もオレも忙しい身だ。
赤司っちも、また皆で集まりたいって言ってたな。
また皆でバカやって騒ぎたい。
「みわさんにも声を掛けたんですけどね」
「……ふーん」
「妬けますか?」
「そういうんじゃないスけど……」
当たり前なんだけど。皆はみわとも友達だから当たり前なんだけど。
オレはみわとロクに会えねえのに、なんか気楽にメシ食いに行こうとかそういう誘いが出来るとかさ……。
「……いや、妬いてんのかもしれないっスわ」
「そうだと思いました」
アッサリとそう言って笑う黒子っち。
ちぇ、なんでもお見通しかよ。
「でも今日は体調が優れないとの事で、また次の機会にと」
「え? 体調が、って、誰が?」
「みわさんです」
え……みわ、具合悪い?
メッセージでは、そんな事一言も……。
また、オレに心配かけないようにって、黙ってたのかな。
ちょっと、様子見に寄ってから帰ろうか。
「そろそろ冷えてきましたし、帰りましょうか。2人は明日からまた忙しいんでしょう?」
確かに、少し落ち着いて汗が冷えて来た。
3月と言えどこの時間はだいぶ冷え込む。
風邪を引く前に退散した方が良さそうだ。
「じゃ2人とも、送るっスよ」