第78章 交錯
青峰っちのシュートは相変わらずだ。
何にも縛られてなく自由で、強くて、それでいて美しい。
ゴールネットをくぐったボールが2回、3回とバウンドし、その動きを止めるまでの間に、オレ達3人もぐったりと崩れ落ちた。
「あー……しんど」
「青峰っち、食べ過ぎっしょ。てかオレもだけど……うぷ」
たらふく飲んで食べて、の後の急な運動はキツい。
スポーツバッグからペットボトルを取り出して、一気に流し込んだ。
「2人とも……ハァ、今日、練習してきたんじゃ、ないんですか」
まるで土下座しているかのような体勢の黒子っち。
天を仰ぐようにして座っている青峰っちとは対照的。
オレも、水分補給してだいぶ回復した。
「テツ、すげー息切れてんぞ」
「大丈夫っスか? 黒子っち」
「現役の2人と一緒にしないでください」
現役。
そっか……黒子っちはもう、競技としてバスケはやってないんだもんな。
バスケはあまりに生活に密着しすぎていて、考えたコトなかった。
黒子っちは、もう新しい人生を歩んでるんだ。
「テツはどうすんだよ、これからバスケは」
「バスケはずっと好きです。だから、これからもこうして趣味では続けていこうと思っています」
「選手としてはもうやる気はないんスか?」
「残念ながら」
そう言って微笑んだ黒子っちの表情は、何かを諦めているようなものではなく、きちんと他の方向を向いているような……真っ直ぐな、彼らしいものだった。
「ま、いーんじゃねえの。どんな形であれ、バスケやってりゃ一緒だろ」
「そうっスね。皆とまたバスケしたいっスわ。皆、何してんのかなあ」
青峰っちや火神っちは、今回の縁で連絡を取り合う事も増えたけど、その他のメンバーは殆ど会う機会がない。
そういえば全日本メンバーが公表された時、緑間っちから今日のラッキーアイテムがメールで送られてきたな。
あれは緑間っちなりの応援だったんだろう。