第78章 交錯
「火神っち、なんかイイコトでもあったんスか?」
「え、なんで分かるんだよ、超能力か?」
青峰っちの隣に座った火神っちは、とにかく顔が緩みまくっている。
これで分からないヤツが居たら見てみたいっスわ。
「すげえニヤけ顔っスよ。どしたんスか?」
「やべえんだわ……やべえ」
その後も、火神っちはやべえやべえしか言わなくなってしまった。
追加注文したドリンクと、枝豆やらえいひれの炙り焼きやらが届き始めたと思ったら、突然。
「ブルズ、決まった」
本当に突然言うものだから、青峰っちもオレも反応出来なかった。
ぶるず?
ブルズ?
「火神っち何言ってんスか、急に」
「俺、決まったんだよ。ブルズに入る事になった」
は?
って
え
まさか
赤い雄牛のチームロゴ。
バスケをよく知らないヒトでも知っている、あの有名な。
バスケットボールの神様、マイケル・ジョーダンが所属した……
「シカゴ・ブルズ、じゃないっスよね……?」
「他になんのブルズがあるんだよ!」
火神っちにツッコまれて、確かにそうだと納得したけど……
「ま、マジっスかぁあぁああああ!?」
危うくジンジャーエールを噴き出すところだった。
ここが個室で良かった。
いや、個室だったけど、オレの叫び声はだいぶ遠くまで響いただろう。
「マジだよ、マジで」
火神っちの目の輝きから、それが現実だという事が分かって。
青峰っちは、さっきから口が半開きになったまま、止まってる。
いや、マジで。
オレも、マジでしか言えなくなってる。
え、マジで?
「ちょ、え、火神っち、こんな所でメシ食ってる場合じゃないんじゃないスか」
「え、おう、あ、そう……か?」
「そうっスよ! 報告しなきゃなんないヒト、いっぱいいるっしょ!?」
「黒子には今電話してきたんだけど」
「いや、黒子っちじゃなくて! 親とかさ!」
「あ、おう、そうだな」
火神っちもだいぶ混乱しているらしい。
テーブルの上の料理を平らげ、ジュースが入ったジョッキを飲み干したところで、先に帰ることに決めたらしい。