第78章 交錯
「お疲れっス!」
「おー、お疲れ」
「あれ、火神っちは?」
「なんか電話してから来るってよ」
「ふーん」
全日本メンバーでの軽い調整程度の練習を終えて、駅前の居酒屋に入った。
メンバーは多忙なヒトばかりだし、家庭持ちも多いからなかなか全員というわけもいかなくて。
今日は、気楽に青峰っちと火神っちとメシを食う事にした。
3人とも飲めない年齢だけど、青峰っちがおつまみを食べたいと言うので、やって来た個室居酒屋。
うるさすぎない程度に聞こえる店内の喧騒……ちゃんと天井まで壁がある個室だから、会話が他の客にダダ漏れという事はないだろう。
安心して話せそうだ。
とりあえず火神っちが来る前にドリンクと食べ物数点を注文して、一息ついた。
「で、どうなんスか、向こうは」
「そりゃこっちのセリフだっつーの。お前はいつまで日本にいるんだよ」
「オレは……インカレ制覇が」
「そうじゃねーよ、それは分かってるっつの。それをどうこう言うつもりなんかねーわ。
インカレ制覇したらどうすんだって聞いてんだよ」
「制覇したら……っスか」
正直、まだハッキリとは考えてない。
てっぺん取れた時の気持ちは、てっぺん取った時しか分からないって、知ってる。
今何を考えたって、想像でしかない。
って、折角久々に会って、したいのはオレの話じゃなくて……
「オレの事はいーんスよ。青峰っちはどうするんスか、NBA入りが決まったら」
「あん? 行くに決まってんだろーが」
「そうじゃなくて! 桃っちとかさ!」
「さつきぃ? なんでそれでさつきの話になんだよ」
……は?
「いや、なるっしょ。桃っちも連れてくんスか?」
「意味分かんねーんだけど」
「ごめん、オレも正直そんな返しをされると思ってなかったから、ワケ分かんないっスわ」
この鈍感すぎる男に、どこから話せばいいのかと悩んでいると、個室のドアが軋みながら開いた。
「わりいな! お待たせ!」
何故かイキイキとしまくった顔の火神っち。