第78章 交錯
いざ、そうなってみないと気付かない事って、結構沢山ある。
それくらい、人間って想像力豊かそうに見えて、貧相な一面もあるのだ。
例えば今。
190㎝を超えた大男が3人、決して大きくない車に乗り込んでいる。
5人乗りの車にたった3人。
いつも、大学のセンパイを乗せてる人数と大差ない。
……のに、物凄く窮屈に感じる。
息苦しさすら感じるのである。
縦の圧迫感、ハンパねえ。
車内の話題はもっぱらバスケの事。
最近出来るようになったプレイ。
試合で体験した、ドラマみたいな出来事。
尽きる事なく、次から次へと湧き出てくる。
友人というのは、どれだけの期間会っていなくても、久しぶりに会った時に会えなかった時間を感じさせないものなのかもしれない。
「俺今練習してんだよ。レーンアップからのウインドミル」
そう言うのは火神っち。
ウインドミルダンク……ダンクする直前に空中で腕をすばやく1回転させるというもの。
高2の夏、Jabberwockと対戦した時に、ジェイソン・シルバーがなんなくやってのけた。
かなりの身体能力を必要とする大技だ。
でも、火神っちの跳躍力なら……いけるかも。
「こないだの試合でよ」
そう会話に加わってきたのは青峰っち。
そう、彼らは今、本場NBAへチャレンジしているのだ。
こんな身近な人間が挑戦しているけど……
正直、まだオレにはピンと来ないんスよね。
NBAに行きたくないわけじゃない。
勿論、最終目標としては本場・海外でプレーしてみたいってのがあるけど……
うーん、やっぱり"ピンとこない"がしっくりくる表現。
来年のオレは、もっと違う結論を出してんのかな。
「本場で観る試合はやっぱ違うぜ。お前も来いよ、アメリカ」
「青峰っちは相変わらずカンタンに言うっスね!」
しかし、有言実行するのもこの男。
彼に憧れてバスケを始めて、オレもここまで来た。
縁と言えば簡単だけど、不思議なモノで。