第78章 交錯
「あらー黄瀬君、久しぶりね~! 中学の卒業式以来? こんなにいい男になっちゃって~! あ、大輝? アイツまだ寝てるのよ、上がって!」
都内某所……いや、青峰家。
一息でそう言うのは青峰っちのお母さん。
懐かしいな。中学時代にはよく試合の応援に来てたっけ。
「お邪魔しまーす」
「たまに帰って来たと思ったら寝てばっかりなんだから」
……オレも実家帰ったら昼寝ばっかりしてるから、ぐうの音も出ない。
思えばオレ達は中学の頃よりだいぶデカくなったけど、青峰っちのお母さんは変わんないな。
今道端で会っても普通に分かりそう。
……オトナになったら、変わんない事の方が増えるのかな。
玄関入ってすぐの階段を上り、一番手前の部屋に入る。
ノック? 寝てる青峰っちには無意味だって。
「入るっスよー」
目の前のベッドの上は盛り上がったまま、ピクリとも動かない。
「青峰っち、もう行かないと遅刻っスよ!」
彼を守っている布団をひっぺがすと、ようやく少し身じろいだ。
「んー……うるっせーな……」
この感じはいくつになっても変わらない。
「うるさくてもなんでもいいから、ほら起きて! 行くっスよ!」
ラチが明かない。
無理矢理横になっているデカイ身体を抱き起こした。
「んあ? なんだお前? 黄瀬ぇ?」
目が半分しか開いてない上に、ひどい言いようだ。
迎えに来いって言ったのはアンタでしょ!
「青峰っち、この後火神っちんちに行かなきゃならないんだから、急いで欲しいんスけど!」
「火神ィ? そこら辺にいんだろ」
「は?」
そこら辺? ってナニ?
「おう黄瀬」
その声に振り返ると、目の前には大男……じゃなくて火神っち。
「おはよ、って火神っち、なんでここにいるんスか?」
「いや、昨日青峰と1 on 1してたらよ、電車終わっちまって……」
「どんだけやってんスか! てかズルいっス! オレも!」
昨日久々に会った2人、1 on 1でもやろーぜという事になって、エキサイトしまくった結果らしい。
それで青峰っちのトコにお泊まりとか、この2人いつの間にかこんなに仲良しになってたんスね……
……でも、1本連絡くれれば、もう少し寝れたんスけど。