第78章 交錯
「……また、やっちゃったっスわ……」
見慣れた天井は、部屋が薄暗いせいで違うものに見える。
また寝落ちた。
ダメだダメだと思ってても、1番眠い時に寝るのが気持ちいいんだよなあ。
時計の針は狙ったかのように傾きがない。
それぞれがピッチリ綺麗に数字の上に重なってる……午前3時。
しまった……今日、何時出発だったか。
電池が瀕死のスマートフォンの電源を入れて、スケジュールアプリを立ち上げる。
「……げ」
今日は6時出発だった。
全日本メンバーで取材があるんだった。
車で青峰っちと火神っちをそれぞれの実家で拾ってから、都内のホテルに直行だ。
2人から何か連絡が入ってないか……確認しようとした途端、虫の息だった電池が切れた。
思わず舌打ちをして充電器に繋ぐ。
再起動には時間がかかるし、先に風呂を済ませよう。
そう思って立ち上がると、インターフォンのランプが点灯している事に気がついた。
「情報」の部分がオレンジに光っているから……寝る前にインターフォンの音が聞こえたような気がしたのは気のせいじゃなかったのか。
このインターフォンは、外にいる人間がチャイムを押すと、その瞬間から録画がされるようになっている。
再生ボタンを押すと、映し出されたのは髪の短い……長めのボブの女性。
……どっかで見た事ある。
誰だっけ、これ。
うーんと……
「あ」
そうだ、この間会った酔っ払いのバスケ選手。
今度1 on 1やろうと言ってた。
もしかして、誘いに来た?
どこまでもタイミングが悪いヒトだ。
そういう相性が良くない人間っている。
思えば、彼女の名前すら知らない事に気が付いて、まあどうでもいっかと思い直して、画面を消した。
面倒だけどちゃんと湯船に浸かって、手入れをしてから電池が半分くらい回復したスマートフォンをチェック。
……無頓着な彼らから連絡など入ってるわけもなかった。