第78章 交錯
「ありがとうございます、先輩。私……甘えていました。自信が無いっていうのを言い訳にして、ちゃんとまっすぐ向き合っていませんでした。後悔の無いように、頑張ります」
目が覚めた。
グズグズと言い訳をして考えるのは、私の悪い癖。
先輩の言う通り……折角目の前に現れたチャンスをただ逃してしまっては、今まで何のために頑張ってきたのか分からない。
掴むんだ。吸収するんだ。
自分が成長するための何かを。
一滴でもいい、一粒でもいい。
見逃さないように、神経を研ぎ澄まして。
「いや、神崎も黄瀬もちょっとまっすぐ過ぎる所があるからな、たまにはよそ見もしろよとは言いたくなるが……まあ、オマエらしいか」
そう言った笠松先輩に、さっきのような硬い空気は無くて。
いつも、先を示してくれる。
本当に、偉大な先輩……。
「勉強はどうだ、うまくいってんのか」
「はい……でも、学校の勉強以外にも、学びたいことは沢山あるんです。
今回のこの件で、栄養についてもちゃんと勉強したいと思いました」
選手を支えるためにはトレーニングだけじゃない、食事だって睡眠だって、生活の全てが必要になるんだって、痛感した。
涼太を支えるため、私は何でも出来るようにならなきゃ。
「スポーツ栄養学、か……素人がちょっと勉強してどうこうなるもんか?」
「そうなんですよね……それも、ちゃんと模索しないと。やってる事に満足して、何も身にならないんじゃ意味が無いですから」
やりたい事は沢山ある。
出来るようになりたい事も沢山ある。
焦らず、ゆっくり……でも着実に。
時間、足りないな。
車は、すぐに私のマンションの前に停車した。
電車でかかる所要時間とのあまりの差に、毎回驚く。
私も、免許……取りたいな。
そうしたら、涼太に心配掛ける事も減るし。
車を買う余裕はないから……レンタカーとか?
レンタカーっていくらするんだろう。
未成年じゃ借りられないかな?
ううん、今から教習所に通っても、免許を取得出来てる頃には20歳になってるだろう。
20歳……なんだか、凄く大人になる感じだ。
想像、出来ないな。