• テキストサイズ

【黒バス:R18】解れゆくこころ

第78章 交錯


「それじゃあ涼太、また」

「待って。オレも外行くから」

「冷えちゃうよ、中に居て」

「いや、センパイに挨拶してないし」

さすがにもう折れてくれる気配はなく、厚手のコートを羽織る涼太と一緒に外へ出た。

日も落ちて、気温がだいぶ下がっている。
まだ春は遠い、刺さるような冷気。

笠松先輩は、既に車を駐車場から出してくれていた。
ちらりと涼太を一瞥して、仕方ないなと言うようにまたため息。

先輩、涼太の事を凄く心配していたんだろう。
このふたりの関係からして、それを素直に言い合うとはあんまり思えないけれど。

「センパイ……スンマセン。みわのこと、よろしくお願いします」

「おう、無理すんじゃねえぞ。またな」

ぶっきらぼうにそう言って、先輩は運転席に乗り込んだ。
身長差があるから、先輩はバックミラーや座席の位置を調整している。

「みわも、気を付けて」

「うん。涼太、お大事にね」

助手席に乗り込もうとして、ポケットの中の違和感に気が付いた。
冷えた金属の感触と、柔らかい布の感触。
これは……

「いけない、お買い物の時に借りた鍵返すの忘れてた」

買い出しに出た時に借りた鍵。
小さいゴールデンレトリバーのぬいぐるみのキーホルダーと、青と黄色の星が連なっているキーホルダーが付いている。

涼太に差し出すと、その手ごと大きな掌に包まれた。

「言ってなかったっスね。これは、みわの」

「え? 違うよ、これは涼太の部屋の鍵だよ」

「いや、そうじゃなくてさ……これ、合鍵だから」

「……え」

合鍵。
一瞬、その言葉が何を指しているのかが分からなかった。

「みわなら、いつでも入っていいからさ。会いに来てくれた時にすれ違うのもイヤだし」

「う、ん……ありがとう」

合鍵……。
いつでも入っていいって。
特別な……特別すぎる、アイテムだ。

考えたこともなかった。
合鍵を貰えるなんて……。
どうしよう、嬉しい。


/ 2455ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp