第78章 交錯
涼太とのキス……潜水してるみたい。
ぱしゃんと水しぶきをあげてキラキラする水面から潜っていくと、段々と音が聞こえなくなって、辺りが暗くなって、身体がぎゅってなる感じ。
この表現が適切なのかは、ぼんやりする頭では判断がつかなくて。
でも、似てる。
どっちが上で、どっちが下かも分からなくなる。
彼と繋がっている時にも感じる……どこからが私で、どこからが涼太なのかが曖昧になって。
心地良くて、気持ち良くて、心臓がバクバクとうるさいのに、ホッと安心している自分がいる。
これを上手く説明する言葉は、あるのかな。
「涼太……も、だめ」
病み上がりの涼太とこれ以上こんな事をするのはやっぱり良くない。
抵抗の意を表する為に彼の肩をトントンと叩くと、逆に強く抱き締められて……視界が回転した。
「りょうたっ、だめだってば……!」
「んー、もうちょっと」
「待っ」
再び重なった涼太の唇の熱は、さっきよりもずっと上がっていて……
みわと呼ばれるたびに身体の内側からドロドロした欲望の塊みたいなものが押し寄せてくる。
「んぅ、っ……」
お腹から下がムズムズして、つい腰を揺らしてしまう。
この感覚を払拭する方法がひとつしかないのは、よく分かっている。
「りょう、っ」
合間に放つ抗議の言葉は、次に降ってくる口づけにあっけなく呑み込まれていく。
「みわ、もう、少し……」
囁くようなその声、力強い腕。
「みわ……応援、してよ?」
殆どゼロ距離の涼太から発された、突然の言葉。
「どっちつかずじゃない。オレはちゃんと分かってる。オレだけは分かってるから」
オレだけは分かってる。
なんて……強い言葉なんだろう。
いいんだ。
誰に理解されなくても、世界中で、このひとだけが分かっていてくれれば、それでいいんだ。