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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第78章 交錯


撫でるように頬に触れた大きな掌が、くるくると円を描いていく。

「これも、イチャイチャに入る?」

覗き込まれた顔が、近くて近くて。
触れた肌の温度が、容赦無くどんどんと上がって行く。

「……はい、ります」

「触ってるだけなのに? おまけに、なんでさっきから敬語なんスか?」

くつくつと肩を揺らして笑う姿は、いたずらっ子のそれだ。
彼は聞く前から全部分かってて、敵う気が全くしない。

「みわのほっぺたってやらかいっスね」

「ね、ねえっ、待って!」

「ん?」

頬の上を滑る手を捕まえて、問う。
彼のペースのまま、終わらせるわけにはいかなくて。

「ど、どうして、時々思うんだけど! この際聞かせて貰うんだけど! どうして涼太は、恥ずかしい事言わせようとするの!?」

涼太はいつも、全部言わせようとするから……異議を申し立てようと、思ったのに。

「恥ずかしいコトってなんスか?」

「え」

少しでも涼太が慌てる姿を見たくて言った筈なのに、ほんの数秒でまた私のピンチ。

「……い、今のこの質問、とか」

「とか?」

「……最中、とか」

「最中? なんの?」

「……」

「なんの?」

「な、なんでもない! 分からないならいい!」

この作戦は間違いだったと、気が付くのが遅かった。
結局、何倍もオロオロするだけだった。

「はは、ごめんごめんウソだって。うーん、なんでなんスかね? 困らせたいってのはモチロンあるんスけど」

「困らせたい!?」

「男はね、好きな子をイジメたくなっちゃうんスよ」

……好きな子を……。
本当に、いつも思う。
どうしてこんなひとが、私の事を好きなんだろうって。

「みわ、キスしたくない?」

「……そんな風に聞くのは、ずるい」

琥珀色の瞳……いつも射貫くような強さを持つそれは、今は飴玉のような甘さを纏っていて。

視界を遮断して、彼の熱を受け入れた。



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