第78章 交錯

「みわ、みわのいい所は？」

「……え？　私、の？」

突然の質問に、文字通り頭が真っ白になる。
私のいい所？
私の、いい……
私の……

「……健康なところ、かな」

「ハイ却下」

「却下！？」

折角思いついた意見が即却下されてしまい、もう出せる駒はない。

「みわはね、全部に全力なんスよ」

全部に……全力？

「それは、涼太も同じだと思うんだけど」

涼太こそ。
今回の件だって、彼が全てにおいて全力で取り組みすぎたから、身体を壊してしまったというのに。

「いや、オレとみわではね、決定的に違うトコがあるんスよ」

違う所……？
口を挟まずに、続きを待つ。

「みわはね、オレと違って下心がないっつーか……上手く言えないんスけど。オレはね、基本的に自分の利益にならない事はあえてしようとは思わないから」

……そうは思わないよ。

そもそも、涼太との出会いだって、私が痴漢に遭って困っているのなんか、放っておいても涼太は何も困らなかったはず。
このひとは、自分の優しさの自覚がないんだろうか？

「オレは、自分に関わるもの全てに全力を尽くすみわが好き」

「え、っ、あの」

「大丈夫。悪いけど、心配しなくてもオレは……オレ達は負けないっスよ。オレん中にはいつもみわが居てくれるからね」

「で、でも……」

「ほら、ここまで来て＂でも＂はナシ。もう心配しないで、みわはみわのやりたい事をやる。オレの事が信用できないんスか？」

「信用できないとか、そうじゃなくて」

「うん、それならいいんス。その代わり、何かあったらすぐに相談する事。隠し事はナシっスよ」

「え、あの、うん、はい」

……結局、そんな感じで話は終わってしまって。