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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第78章 交錯


「そっか……」

涼太は、俯いて真顔になったまま、考え込んでしまった。
病み上がりの彼に、そんな事をさせたいんじゃないのに。

時刻は、17時になろうというところ。
もう、今日は帰った方がいい。

「涼太、突然変な事言ってごめんなさい。今日はもう、帰るね」

「待って」

立ち上がろうとした腕を、力強く引かれた。
緩めるつもりのない、掴み方。

「待って、みわ」

胸の中に、後悔の念がジワリと広がっていく。
やっぱり今、話すべき事じゃなかったかもしれない。
電話とかで、顔が見えない時に言った方が良かった。

その瞳に見つめられると、全てが引きこまれてしまう。
感情も、言葉も。

「ごめん、ちょっといきなりだったからさ、なんて言ったらいいか分かんないんスけど」

「分かってる。いきなり変な事言ってごめんね。出直すよ」

「みわ、待ってってば」

彼の手を振りほどけないまま、身体だけはドアへ向ける。
分かってる。私また、逃げようとしてる。

「みわは何を心配してるんスか? 今まで以上に会えなくなるから不安?」

「ううん……そうじゃ、なくて」

そうじゃない。

「対戦校で活動する、とか……涼太の事応援してるのに、そんな裏切るみたいな真似、出来ないって」

涼太は、私のその言葉を聞いて……プッと吹き出した。

「なんスか、裏切るって」

耐えかねたというように、肩を揺らして笑い始める。
笑いどころが全然分からない。
私、何か変な事言った?

「ゴメンゴメン、バカにした訳じゃないんスよ。ただ、発想が面白くてさ」

「お、面白くないよ!」

「だって、まるでみわがスパイみたいな感じで言うからさぁ」

涼太の声も言葉も柔らかい。
うっかり、何の話をしていたのか忘れてしまいそうだ。

「あの、涼太……」

「みわの話は分かったっス。とにかく今すぐに帰るっつーのは却下。そんな事が理由で、帰さないっスよ」

涼太に促されて、ベッドの端へと腰かけた。


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