第24章 引越し
翌日、午前中は溜まっていた家事やノートのまとめなどをしていたら、あっという間に時間が過ぎてしまった。
黄瀬くんの洗濯物を持って、練習に向かう。
「あ、みわっちおはよう!」
背後から、いつもの明るい声。
「おはよう」
黄瀬くんのキラキラした笑顔。
自分が昨日していた事が恥ずかしくなって、ちゃんと目が合わせられなかった。
「これ、洗濯物だよ」
「ありがとう、助かったっス! みわっち今日帰り、うち見ていかない?」
「え? ……あ、うん、見たいな!」
どっかいけ、いやらしい自分。
練習後、纏わりつくような暑さを感じながら、黄瀬くんの家に向かう。
「あー今日もあっちいっスね! 終わってシャワー浴びても帰るまでにまた汗かくとか、嫌すぎ」
「ほんと、なんでこんなに蒸し暑いんだろうね」
「家近いし、これからはシャワー浴びずに家帰った方がいいんスかねぇ」
黄瀬くんが足を止めた。
「オレの新しい家、ここっスわ」
「……え?」
キレイなエントランス。
まるでタワーマンションの入り口のようで、私のアパートとは天と地ほどに差があるマンション。
「す、凄いね、家賃高いんじゃ……」
「オレが自分で探した物件はセキュリティが甘いとか言って、家賃半分以上は事務所が負担するからってこのマンションにしたんスよ」
やっぱり、芸能界って違うんだな……。
こういう時に、現実を思い知らされる。
エントランスでオートロックを解除して中に入ると、マンション内とは思えない調度品の並んだ来客用スペースなど、まるで一流ホテルのような光景が続く。
エレベーターもキレイで広い。
「ここっス」
手早く鍵を差し入れドアを開けると、ドラマの中やモデルルームで見るようなキレイな玄関が。
「ドーゾ」
「……キレイ……お邪魔します」
玄関からは短い廊下が伸びており、左右に1部屋ずつと、風呂やトイレ、正面にリビングという造りになっていた。
「ここ、無駄に2LDKなんスよね……オレ、ワンルームで充分なんだけど」
「そ、そうだね……広い……」
「一部屋丸々物置っスよ。物もないけど。
みわっち、いつでもうちに引っ越してきていいっスからね」
「あはは……」
落ち着かない気持ちを払拭するように、各部屋を見学させてもらう。