第78章 交錯
それから、遅めの昼食というか、早めの夕食というか、なんとも中途半端な時間に食事をとった。
涼太は、もう元気になったから普段通り食べられるなんて言い出し始めて。
さすがにまだそれは無茶だと思ったのだけれど、結局普段とさして変わらない量をたいらげてしまった。
凄い回復力。
食後暫くしてから、甘いモンが欲しいなと言う涼太に、小さなマグカップでホットチョコレートを作った。
……作った、と言うよりも、昨日スーパーで買った、棒付きのチョコレートをホットミルクの中で溶かすという簡単なものなんだけれど。
店舗入り口すぐに大々的に開催されていたバレンタインフェア。
もしかしたら飲めるようになるかもしれないと、買っておいて良かった。
「あ、意外と甘さ控えめなんスね。飲みやすい」
「甘過ぎないやつを選んだの、正解だったかな」
「ん、ウマイっス」
「……」
ふっと訪れる、会話のない時間。
他のひととなら、何を話せばいいか気を遣ってしまう空白の時間が、涼太とだと何故かどことなく心地良い。
でも、今日は話さないといけないんだ。
「あの、……涼太」
「ん?」
「あの、ね。スポーツトレーナーの、補佐として……手伝わないかって、お話を頂いているの」
「そうなんスか? 誰から?」
「……マクセ、さん」
「……ふーん、アイツっスか……」
お話を下さったのがマクセさんというのも、少し言い辛かった。
以前のいざこざもあったし……。
「まあ、あのヒト顔広いみたいだし、バスケに関してはちゃんとしてるけど」
「うん、あの、ごめんなさい、気を付ける」
気を付ける、って……なんておバカな返事をしたんだろう。
どうにも、なんて返したらいいのか分からない。
でも、今問題なのはそこじゃなくて……
「涼太、どう……思う?」
「……前の一件、忘れたわけじゃねえけど……それがみわにとって大きなチャンスになるなら、みわのやりたいようにするのが一番いいと思うっスよ」