第78章 交錯
「嬉しい事、言ってくれるんスね」
「嬉しい……?」
ポロリと漏らした本音に返って来たのは、可憐なお花が花開いたような微笑み。
「嬉しいっスよ、オレがいないとダメになっちゃうんでしょ?」
涼太がいないと、私は本当にダメだ。
彼が、こころの支え。
でも……
「ダメだよ、そんなの……もっと、ひとりで何でも出来るように強くならなきゃ」
もっと強くならなきゃ。
ひとりで居られるくらい、強く。
「うーん、それはちょっと、合ってるようで違うんじゃないスか?」
「違う……?」
「それは、"強さ"じゃない気がするんス」
涼太の言ってる事が、いまいち掴めない。
合ってるようで違うって、それは"強さ"じゃないって、どういうこと……?
「誰かの為に頑張れるって、スゴいことなんだと思うんスよ。自分の為にはさ、誰でもいくらでも頑張れるっスよね。オレもみわに出逢うまではずっとそうだったし」
私も、涼太に出逢うまでは、こんな存在がこの世にある事すら知らなかった。
そのひとの事を想えば、力が湧き出てくるような感覚になるなんて。
「このヒトの為に頑張ろうって、このヒトの為なら頑張れるって、すげー事なんだなって、分かったからさ」
ああ……うん。
本当に、そう。
「少なくともオレは、もう自分の事だけ考えてればよかった頃に戻りたいとは思わない。
誰かの為に頑張ろうと思える今が、好きだから」
強い。
涼太は、揺らがない。
私は、どうだった?
強くなりたい強くなりたい、涼太の隣に居られるようにって……結局、自分の事ばかりを考えていた?
「みわの為に頑張れるオレは、ひとりだった頃よりもずっと強い」
全てのものに感謝したい。
神様でも仏様でも、誰でもいい。
涼太に出逢わせてくれて、ありがとう。