第78章 交錯
もはや自由の全くきかない腕で涼太を制止しようと試みても、くいくいと衣服の裾をようやく掴めるだけで、まるでねだっているかのよう。
「りょう、た……」
だめ、その気持ちを込めて肩を叩いたら、涼太は眉尻を下げて微笑んだ。
「ん、分かってる……みわを困らせたくない、し……」
そう言って、涼太は唇を解放してくれた。
ふたりを繋ぐ銀糸が、名残惜しさを助長する。
それすらも呆気なくぷつりと切れた後、彼が吐いた息は、濡れていて。
唇が離れた後も、密着した身体を離す事がなかなか出来ない。
この世で1番、大好きな温度。
「……みわ」
ぎゅ、と抱きしめられると、涼太の首筋からは、甘い匂い。
離れたく、ない……。
「なんでだろ……好きすぎっスわ」
「うん……」
それは、いつも私が思っている事と全く同じで。
どうしてこんなに、好きなんだろう。
どんどん、好きになっていく。
あきから聞いた……変わらずに"好き"でいられる期間は、3年だか4年だか、せいぜいそんなものなんだって。
その後は、違う形の気持ちに変化していくんだって。
私たち、付き合ってもうすぐ丸4年。
この気持ちも、変わっていってしまうのかな。
想像出来ないな……。
「もーオレ……みわがいてくんないと、ホントダメだからさ」
する、すると髪を梳かれるのが気持ちいい。
「……違うよ……」
「ん?」
覗き込んでくる宝石の瞳は、決してくすむ事も濁る事もない。
「涼太がいないとダメなのは、私……」
このまっすぐな愛に、応えなきゃ。
なんにもなくて、なんにも出来ない私だけど、ちゃんと自分の気持ちを、伝えなきゃ。
その為に強くなりたいというのは、間違ってる?
何もせず、ただ愛されるだけの人形みたいな存在にはなりたくなくて。
いつも、彼の側で彼を支えてあげられる人間でいたくて。
大阪での話、どう答えを出したらいいのか……まだ、見えない。