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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第78章 交錯


ガチャリと玄関ドアが開く音。
ただいま、の声もなくリビングのドアがそっと開く。
多分、オレが寝てるんだと思ったんだろう。

「おかえり、みわ。外寒くなかったっスか?」

「あっ……た、ただいま」

部屋に入って来ようとしたみわに先に声を掛けたら、驚かせてしまったようだ。
両手には、近所のスーパーのレジ袋。

「寝られなかったんだね」

「ん、病院で結構寝たしね」

ベッドから下りて、みわが買ってきてくれたものを冷蔵庫に入れようとして……また、止められた。

「本当に、本当に涼太は寝てて」

小さな手に背中を押されて、またベッドまで押し返されて。
ベッドに腰掛けると、ギィと嫌な軋みを感じる。

ああ、ヤダ。
なんかヤダ。
オレが悪いんだけど、こんなんヤダ。

「みわ、ごめん。怒んないで、機嫌直して欲しいんスよ」

なんて言ったらいい?
こういう時。
やっぱりオレ、仲直りは得意じゃない。

本調子じゃないからなのか、うまく言葉が出てこない。

「怒る……って、誰が……?」

みわは、オレが何言ってるのか分からないといった顔。

ぽかんと口を開けたその表情には、嘘がないように見える。

「みわがさ、オレがこんなんで迷惑かけて、怒ってるっスよね?」

「私……が? え、怒ってないよ! 怒るわけないよ!」

くるくると変わる表情、慌てた様子。
……そうだった、みわは嘘をつけるタイプじゃなかった。

怒ってたんじゃ、ない?

「ごめん、今のナシ……オレ、やっぱちょっと疲れてんのかな」

ダメだ。
彼女の事まで見えなくなるなんて、最悪。

「疲れてるから倒れたんだよ……。過労なんて、相当だよ」

過労。
テレビかなんかで聞くようなその単語は、やっぱり実感がない。

「今日、ここに居るから……手伝える事があったらなんでも言って」

スーパーの袋とは別に、コンビニの小さな袋。
もしかして……中、着替え?



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