第78章 交錯
「……どう?」
「ん、ラクになって来た」
「足がつるのって、電解質が……」
ああ、みわがまた難しい事を言ってるけど、頭に入ってこない。
さっきからみわの優しくて甘い匂いが……。
ナニ、なんで?
いつも思うけど、なんで香水もつけてないみわからこんなにいい匂いがすんの?
「みわ」
痛みの和らいだ足に力を入れて膝を立て、みわを引き寄せた。
細いけど、柔らかい身体。
でも、オレは彼女のもっと柔らかい中心を知ってる。
「っ、え?」
くんくん、と耳元に鼻を寄せると、やっぱりこの優しい匂い。
シャンプーじゃない。柔軟剤でもなさそう。
「なに、なに、涼太?」
もう付き合い始めて4年目? くらいになろうというのに、みわはこれくらいのコトでいつまでもオロオロしてるし。
なんでもいいんだけどさ、とにかく今はくっついていたい。
だって……
「みわ、会いたかったんスよ……」
こうして会うのは、クリスマス以来。
なんでこんなに時間がないんだってくらい、時間が取れなくて。
やる事詰め込んでさっさと終わらせればみわに会う時間が出来るかもって、早く一人前になれるかもってガムシャラに頑張って、結局ぶっ倒れて。
何やってんだ、オレは。
焦ってどうすんだよ、高校1年の時と同じじゃねーか。
さらさらの髪を梳くように、指を通す。
耳元で名前を呼びながらうなじに触れると、細い身体がピクリと揺れた。
んー、やば……ちょっと、火がつきそう。
「みわ……イテッ!」
久々の甘い雰囲気に……なると思ったのに、みわは素早くオレから離れて……オレにデコピンした。
女の子の力とはいえなかなかにイタイ。
「りょ、涼太っ! 分かってるの!? ちゃ、ちゃんとゆっくり休まないと、だ、ダメでしょう!?」
顔を真っ赤ににしてどもりながら説教する姿が可愛すぎて、ついその唇にキスをした。
また怒られたけど、2度目のデコピンは飛んでこなかった。