第78章 交錯
あれから数日。
結局なんだかんだ同じような展開ばかりの日々で、バスケのみに打ち込む事が出来ない事に小さなイラつきを覚えつつも、忙しく過ごしていた。
午前中はテレビの収録や雑誌のインタビュー、午後から大学の練習、夕方からは全日本関係の顔合わせやら何やら。
家に帰り着く頃には気力も体力も使い果て、玄関で朝まで寝るという事も少なくなかった。
カーテンの隙間から差し込んでくる朝の知らせに、ぱちりと目を覚ましたのはベッドの上ではなく、床の上。
完全に休まる事のなかった身体がギシリと痛む。
「やべ、またここで寝てた……」
明日はそんなすり減る毎日の中の癒し、みわと過ごすバレンタインデー。
レストランを予約しようと思っていたら、みわから部屋でゆっくり過ごしたいと言われて。
ふたりで過ごす甘い時間を想像して、頬を緩めた。
今日は久しぶりに、朝から体育館に籠れる貴重な日だ。
昨日の練習で上手くいかなかった連携を完璧に近づける為に、もっと練習したい。
「シャワー浴びないと……」
そう独り言を言いながら、テーブルの上のスマートフォンを確認しようと立ち上がって、
視界が、揺れた。
あ
ヤバい、これ
倒れる かも
そう思ったのは一瞬。
頭からすうっと血の気が引いたような……その後、身体に力が入らずに膝をついた。
テーブルに手をついてるけど、立っている事も座り込む事も出来ずに、ただ身体が揺れるのを動揺するココロで感じる事しか出来ない。
このままじゃ、遅刻するかもしんねー。
先に、笠松センパイに連絡しておいた方がいいか?
そんな呑気な事を考えたオレを嘲笑うかのように、目の前が真っ黒に染まった。
ヤバい
そう思って咄嗟に笠松センパイの番号をタップしたつもりで……
……そのまま世界は暗転した。