第78章 交錯
涼太に会えるまで、あと1週間……
そんな事を考えながら目覚めた朝だった。
顔を洗ってあきと朝食を食べて、出掛ける準備をする為に部屋に戻って来て。
昨日は、涼太から着信もメッセージもなかったな……。
きっと、忙しいんだろう。
通知の音や振動で起こしてしまうかもしれないと、昨日は私からも連絡は取らなかった。
ご飯、ちゃんと食べてるかな。
ちゃんと眠れてるかな。
マグカップに淹れた食後の緑茶をひとくち飲んで、テレビをつけた。
天気予報を聞いて、お洗濯しよう。
『CMの後は、ジャンケンタイム! 今日のお相手は黄瀬涼太さんです!』
「!?」
いつもの朝の番組に、突然のその名前。
手からすっぽ抜けそうになったマグカップを慌てておさえる。
画面の端に彼が映っているのを確認して、すぐにリモコンを手に取った。
慣れない操作で、なんとか録画開始。
涼太が全日本メンバーに選ばれてからテレビに出演する機会も増えて、安い機種だけど録画機器を買ったんだ。
「あんたはオカンか」ってあきに言われちゃったけど……。
新作シャンプーや化粧品のCMを挟んで、笑顔の涼太が映し出された。
どうやら、データ放送? というのだろうか、視聴者がリモコン操作で涼太とじゃんけんをして、その勝ち負けでプレゼント応募などができる仕組みらしい。
いつも観ている番組なのに、あんまり意識したことがなかった。
"グー"の色のボタンを押して、制限時間が過ぎるのを待つ。
『それじゃあ、いくっスよ! じゃーんけーん、ポンッ!』
真っ白い歯と笑顔を零した涼太が出したのはチョキ。
チャッチャラー♪と、ファンファーレのようなものがテレビから流れる。
別にキャンペーンに応募するつもりはないんだけど、なんだか嬉しい。
それにしても、涼太……なんだか、顔色が良くない?
カラ元気のような……気のせいかな。
涼太は結局、そのコーナーと、占いコーナーのみの出演だったらしく、その後は画面から姿を消していた。
いつも、テレビに出る時は事前に教えてくれるのに……。
大丈夫かな。
カレンダーを確認する。
涼太も私も、予定はギッシリだ。
まだ、来週まで会えない……。
会いたいな。