第78章 交錯
「人と人を繋ぐ……ね。私、貴方の事ちょっと誤解してたみたい。もっとチャラチャラしてるのかと思ったわ。損してない?」
「別に、なんと思われようとオレは構わないっスけど」
チャラチャラしてた時代があったのも事実。
今でも、チャラく見えるんだろうという事も分かってる。
「……強いのね。貴方みたいな人こそ、国を背負ってプレーするのに相応しい人なんだわ」
それは……オレにはちゃんと"オレ"を見てくれるヒトがいるからだと思う。
それこそ、目の前が灰色がかった時代には見えなかった、希望の光だ。
「ねえ、ちょっと1 on 1しない?」
「……は?」
そんなしんみりした思考を遮るかのような言葉に、思わず頬が歪んだ。
「あ、その顔いい。外ヅラとか気にしない素の表情って感じで」
そう言いながら散乱している下着や衣類を身に付けていく様は、まるで情事の後のようだ。
女の人がブラ着ける仕草ってなんかエロいよな……なんて、むかーし、青峰っちと話してたのを思い出した。
「オネーサン、聞いてた? オレ悪いけどすげえ疲れてて、今すぐに足を伸ばして寝たいんスよ」
念願のベッドはすぐそこに。
寝たい。今すぐに寝たい。
「分かったわ。疲れてない時ならいいのね?」
「……まあ別に、バスケするってんなら付き合うっスけど」
バスケ選手として、純粋に彼女がどんなプレーをするのかという興味はある。
それに、とりあえず今は首を縦に振らないと彼女の気もおさまらないだろう。
今はとにかく寝たいんだってば!
「ふふ、噂以上のバスケバカだったのね。じゃあまた会ったら勝負して」
「ハイハイ、またどこかで会ったら、っスね」
彼女はそう言うと、さっさと身なりを整えて帰り支度を始めた。
「お疲れのところ悪いんだけど、タクシーってどの辺りで捕まる?」
「んと、ここ出たらすぐ右手の坂を下っていって、最初の角で左に曲がってから……いやいいや、大通りまで送るっス」
流石にこの辺りは人気もない。
まだ薄暗い中女性をひとりで歩かせるのは危険だ。
……寝たいんスけど!!