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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第78章 交錯


「……そうなんスか」

彼女もバスケプレイヤーとは奇遇だ。
確かに、鍛えられた身体をしている。
継続的に鍛錬している肉体。

あ、もしかして女子バスケ部のメンバー?
うちの女バスの選手は実はよく知らなくて。
この間男バスと女バスで懇親会をやったけど、ふんわりとしか覚えてない。

いや、昨日の口ぶりからして、彼女はもっと年上だろう。もしやOG?
だからうちの学校の近くにいた?

よく分かんない事だらけだな。

「こう見えてもね、シューターなのよ。当たると強いんだから。クラッチシューターってやつね」

クラッチシューター……誠凛の日向サンを思い出す。
ここぞという時に当たり出すと、怖いんスよね。
味方ならこれ以上ないくらい頼もしいんだけども。

「黄瀬涼太、貴方は……本当に楽しそうにプレーするわよね」

「……?」

彼女の言わんとしていることが分からない。

「オネーサンは、バスケしてて楽しくないんスか?」

単なる疑問だった。
しかし、その言葉を受けた彼女の表情から、これは大きな地雷だったのかもしれないと気付く。

「楽し……かったわ。うん、楽しかった。いつからだろう、楽しくなくなってしまったのは」

少し、昔のオレと重なる。
ガッシリと噛み合ったはずの歯車が少しずつ狂い始めて来た時のあの鈍く軋む音。
皆の笑顔が枯れていく様がはっきりと感じられて、ココロがざわつき出す、あの不快感。
今でもハッキリと思い出せる。

「ごめんなさい。こんな事言ったって、貴方には分からないわよね」

「分かるっスよ。オレも、そうだったから」

彼女は、文字通り目を丸くした。
キツい目が少し柔らかく感じられる。

「信じられない……貴方みたいな人もそう感じたりするのね」

「ま、色々あったんスわ。今はそんな事ないっスけど。バスケが好きだし、楽しいし」

オレを救い出してくれたのは、海常の皆。
そして、かつて道を違えた仲間達。

「そう……私もそう、なれるかしら」

「なれるっスよ。バスケは人と人を繋いでくれるモノっスから。オレはそう思ってる」

バスケが繋いでくれた縁。
キセキの世代の仲間達。
海常の仲間達。
みわ。

大切なものは、いつもバスケが繋いでくれた。




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