第23章 夏合宿 ー最終日ー
「黄瀬、神崎、着いたぞー起きろー」
森山先輩の声だ。
……起きろ?
目を開けると、窓の外はいつも見ている景色。学校だった。
すっかり寝てしまっていたのか。
「あ、すみません寝入ってしまって……!」
後ろを振り返ると、残っている者はすでにおらず、黄瀬くんと私だけだった。
黄瀬くんはまだ寝ている。
肩を揺すって呼びかけると、目を開けた。
「……みわっち? 朝っスか?」
「夜だよ! 何寝ぼけてんだ黄瀬ェ!」
笠松センパイがそう言って黄瀬くんに蹴りを入れる。
急いでバスを降り、帰路に着いた。
黄瀬くんは今日も私の家に送ってくれるそうで……。
「あ〜よく寝たっスねー! ちょっと体力回復。みわっちも寝れた?」
「私も結構……もう序盤から記憶がなくて……」
「みわっち、センパイの肩に寄りかかるから、大変だったんスよ!?」
「もう本当に記憶になくて……ごめんなさい」
笠松先輩は思わず固まったらしい。
丁重にお詫びした。
「ごめんね黄瀬くん、送って貰っちゃって。これから家まで帰ると、遅くなるでしょ」
「あ、そういえばねみわっち、オレ実はもう引越し終わってるんスよ」
「え!? そうなの?」
「荷物の運び込み自体は合宿前に終わってて、後はガス屋が明日午前中に来るだけっスかね」
「そうだったんだ、手伝うって言ってたのに、ごめんね」
「気にしないで。まとめてみたら荷物なんか全然なくてソッコー終わったっス。後は洗剤とかそーゆーのを明日の午前中に買いに行くかな」
「洗濯、今日の分私預かって洗っておこうか?」
「えっ、悪いっスよ。結構あるし」
「いいよ、洗剤ないなら困るでしょ。明日練習前には乾くと思うから」
「マジで……じゃあ……ほんとゴメン、甘えていい?」
所在無さげにしているのがなんか可愛い。
カバンから袋を取り出して、渡された。
「これなんスけど、洗濯物」
「ハーイお預かりします……って、ガス使えないのに、色々困らない?」
「明日朝一で来るみたいだから、大丈夫っスよ」
「うちに……泊まって行く?」
「……ありがたいんスけど、みわっちといると色々欲望と闘うのが大変っスから」
少し照れて遠慮がちにそう言う、黄瀬くん。
……好きだなあ。