第23章 夏合宿 ー最終日ー
オレはこうして、みわっちの隣に座ることに成功したのである。
……さっきからみわっちは爆睡だけど。
オレの肩に寄りかかる彼女が可愛い。
みわっち独占、到着までじっくり観賞するっス!
「……嬉しそうだな黄瀬」
小堀センパイが少し呆れたように言った。
「そうっスか?」
「お前も疲れたろ、寝ろよ」
「大丈夫っスよ!」
とは言ったものの、やっぱり合宿はキツかったっスね〜……
「……笠松、黄瀬寝たか?」
小堀が少し身を乗り出しながら笠松に問いかける。
「……寝てるな」
笠松が声を低くして答えると、真後ろの席から森山が顔を出した。
「どれどれ、モデルの寝顔でも拝見しようかね」
「なんだ森山、起きてたのかよ」
笠松も小堀も少なからず驚いた。
今の今まで静かだったので、森山はとっくに寝ているものだろうと思っていた。
森山は席を立ち、黄瀬と神崎の席を覗き込む。
「俺だけ1人寂しく寝るわけにはいかないだろ……って、こりゃまた大口開けて寝てんな。神崎も同じような顔してるけど」
笑いながら写真を撮る森山。
森山は、黄瀬と神崎のコンビが好きだった。
どちらも不器用だけど、真っ直ぐで。
放っておけない存在だ。
「……なあ笠松、黄瀬って最近までずっと、遠征の時も移動中、俺たちの前で寝たことってなかったよな」
小堀の問いに、笠松が意外そうに答える。
「なんだ、小堀も気付いてたのか」
「小堀だけじゃなくて俺も気付いてたけどな」
森山も負けじとそう言った。
「弱味を見せたくなかったんじゃないか。
いつも厚い壁張って、深い所には踏み込ませないって感じだったもんな」
小堀のその言葉に、森山も深く頷いた。
「……心を開いてくれてるみたいでさ、なんか嬉しいよな」
森山がそういうと、小堀が笑顔で返す。
「そうだな、素直に嬉しいよ。最初があんな感じだったからな。……笠松もだろ?」
「……まあな」
笠松は、小堀とは対照的に少し照れ臭そうにそう言うだけだった。
「しっかしすげえ顔だな、モデルさんよ」
3人は声を揃えて笑った。