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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第78章 交錯


なんだ?
突然、背中の先から聞こえた笑い声。

でもその声はオレが求めていたものじゃなかったから、振り向きもしなかった。
そもそも、オレに笑いかけたわけじゃないかもしんないし。

そのままボーッと真っ黒に塗り潰された空を眺めていると、隣のブランコがギィと軋んだ。

「若いね〜。大学生?」

ちらり、目線の先には女性。
暗くて色まではハッキリ分からないけど、ツイードのコートにもっこもこのマフラーを巻いている。
足元は色の濃いスキニーパンツに、ロングブーツ。

細くてちょっとキツめの目。
鼻筋が通っていて、薄い唇。
色はわかんないけど、少し長めのボブ。
立体感のある髪型が、シャープな顔立ちに似合っている。
……かなりの美人だ。

若い……その言い分からして、彼女は結構年上なんだろうか?
見た目は大学生くらいにしか見えないんだけど。

そして、手には……缶ビール?

「悩む青少年って感じ? イイなぁ、若いなぁ、青春だなぁ」

これは、酔っ払いに絡まれたという事になるんだろうか。

こういうのは、相手しないに限る。
クソ、やっぱりまっすぐ帰るべきだった。
面倒くさ。

「飲むぅ〜?」

ずずいと缶をこちらに差し出して、どこか嬉しそうだ。

「いや、未成年なんで」

……未成年とかそういう問題でもない気がするが。
成人してたってこんな怪しいオンナからは絶対、受け取らない。

「っていう事は、まだ1年生かぁ〜若い! 若いねぇ、前途は明るいねぇ」

……帰ろ。
もう返事を返す事もなく、ブランコから下りた。

「なんでも出来るじゃん、未来は無限大だよ、むげんだい……」

お経のようにブツブツ呟く声を背に歩き出したけど、突然ドサッという鈍い音に混じって、缶が土の地面を転がる音。

「……はぁ!?」

振り返ると、オンナはブランコから落下したらしく、ぴくりともせずに横たわっている。

まさか、寝た?
この寒空の下?
凍死するんじゃないか?

マジっスか、勘弁して!!


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