第78章 交錯
年々、時が経つのが早く感じるようになるって、本当ですか?
神崎みわ19歳、既にこんなに早く感じるのに、10年後にはどうなってしまっているのでしょうか。
おばあちゃんがインフルエンザで年末に寝込んでから年始にかけて療養してたから、私もそれに合わせて、予定よりも長くずっとおばあちゃんの家に居た。
おばあちゃんが完治してからは集中講義に顔を出したり、そうこうしているうちに冬休みも終わって、また授業とバイトの日々。
テストもあったし、おばあちゃんの家に顔を出したり自宅に戻ったりで暫くバタバタしていたら、あっという間に春休みになってしまった。
もう、2月だ。
結局、年が明けてから一度も涼太に会えてない。
それもそのはず……
『今日のゲストは、イケメンすぎるバスケプレイヤー、黄瀬涼太さんにお越し頂いています!』
『ども、よろしくお願いします』
目の前のテレビに映るのは、多分、衣装なんだろう……私服よりも少しよそ行きの格好の涼太。
お昼の情報番組だ。
観客席からの割れんばかりの黄色い声に、司会者も驚いてる。
『今話題のバスケットボール日本代表選手、今日は……』
そう、日本代表選手が発表されてから、涼太の周りの環境は目まぐるしく変化している。
通常の大学チームの練習に加えて、簡単な取材などをこなす日々。
通常ならそれだけで済むところだけれど、マスコミはこれだけ魅力的な黄瀬涼太という存在を放ってはおかなかった。
あれだけの美貌に、朗らかで人当たりが良いとくれば、人気が出ると踏んだんだろう。
それは、当たり前の事で……彼への注目とともに、バスケットボール自体への関心も集め、"バスケ女子"なんていう、バスケを応援する女の子を表現する言葉まで出てきて。
日本代表ユニフォームは、飛ぶように売れているらしい。
涼太が、世間を動かしている。
私は、春からの大阪の大学での活動に、まだ踏み切れないでいた。
自分が今一番したいことは、なんなんだろう。
自問自答する日々……涼太にはまだ、相談出来ていない。