第78章 交錯
ふう、とマグカップに息を吹きかけると、辺りがコーヒーの香りに満たされる。
コーヒーアロマというだけあって、癒される香りだ。
「色々、解決しておけよ」
「へ」
突然の笠松センパイのその言葉の意図が掴めなくて、我ながらアホヅラをしてしまったと思う。
「なんてカオしてんだ。なんちゃってイケメンが台無しだぞ」
「なんちゃってって! ヒドイ! センパイがいきなり不思議なコト言うからじゃないスか、なんスか色々って」
「……色々って、色々だよ。試合の邪魔になりそうな心配ごとは解決しとけって話だ」
「あ、……ハイ」
心配ごと、か……
今のところ、ない……かな。
勉強は、うん、まあ……だし、みわとはこれ以上ないくらい順調だ。
こころもカラダもしっかり繋がって……
こころも……カラダも……
「オイ、顔緩んでんぞ」
「イタっ! 痛いっス! 蹴らないで!」
「忘れんなよ、オマエも神崎も、言わないで我慢して溜め込むタイプなんだからよ」
「……センパイ、オレは結構オープンなタイプっスよ?」
「言ってろ」
ぐうの音も出ない。
確かに、そうだ。
人当たりが良い自覚はあるけど、それとは別。
オレは意外に黙々と行動するタイプでもある。
みわは言わずもがな、だろう。
センパイは流石、毎日一緒に居ただけあって、オレ達の事よく分かってるっスね……。
「ま、心配ないってんならいいけどな」
「……ハイ」
大丈夫。
オレ達に不安な事なんてない。
このヒトが作ったチームで、信頼できるチームメイトとともに、全国制覇を目指す。
応援スタンドで祈ってくれている、最愛のヒトに捧げる勝利。
大切なものは、すぐそこにある。
目標も、手に届くところまできた。
後は、その目標のために今オレが出来る事を死ぬ気でやるだけだ。