第78章 交錯
「お待たせしました」
「わりいな」
センパイとオレの分のホットコーヒーを淹れて、テーブルに向かい合わせにして座った。
確かに、センパイにさっきまでの酔いの雰囲気は見られない。
女の子が苦手だし、なんとなく酒にも弱いんじゃないかなんて勝手に想像してたんだけど……言ったらこれ以上なくシバかれるだろう。
「黄瀬、オマエこれ見ておけよ」
そう言ってセンパイが差し出したのは、さっきの作戦会議が記された紙。
「センパイ、これカレンダーなんスけど……そんで、1月は今始まったばっかりなんスけど……」
センパイは、ペラリとめくりながら裏面を見て、驚きで目を丸くした。
「なんでオマエ、これから使うカレンダーをメモにしてんだよ」
「メ・モ・に・し・た・の・は・セ・ン・パ・イ・で・しょ!」
あ、うっかりタメ口になってしまった。
ヤバい、シバかれる。
「全然覚えてねえけど……薄っすらそんな記憶が思い出されてきたわ。わりいな」
「う、いや、いいっス……けど」
みわの他にも頭が上がんないヒトがいた。
このヒトにも敵わないんだ、オレは。
キャプテンを務めて、初めて知った。
その背中にかかる重圧を。
仲間をこころの内に浮かべる時間の多さを。
経験したからこそ、分かる。
この男がどれだけ素晴らしいキャプテンだったかが。
「どこの学校も仕上げてきてる。力負けすんじゃねーぞ、エース」
「望むところっス。センパイは、オレが他のチームのエースに負けると思ってるんスか?」
「いや、全く」
……だから、オレはこのヒトに弱いんだって。
こんな、全面的に信頼されたら、もうついて行くしかないじゃないスか。
頂点に向けて、この大きな背中を見ながら。
なんて高い壁だろう。