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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第78章 交錯


ぴゅるり、突然吹いた刺すように冷たい風が頬を打ち、背筋がブルッと震えた。

「うお、さむ」

『涼太……まさか、外にいるの?』

「そうなんスよ、皆寝てるからさあ」

『ええっ、風邪ひいちゃうよ! 早く部屋に入って!』

「大丈夫だって」

『涼太』

「ヘイキヘイキ」

『……』

……あ、やべ、この気配。
みわが、怒ってる時の雰囲気。

自分のコトじゃ滅多に怒らないクセに、オレのコトになると厳しいんだよなぁ……。

「分かった。もう部屋に入るっス。また解散したら電話していい?」

『……うん、私はいつでも大丈夫だよ。だから、あったかくして』

はい、オレ完全に尻に敷かれてる。
みわには勝てない。

「それじゃあね」
『あの、涼太』

「ん?」

突然呼び止められて、暫くその次の言葉を待ってたけど、続きはなく。

『あの……やっぱり……なんでもない。風邪に気をつけてね』

「ん、ありがと。みわもね」

何を言いかけたんだろう?
言いたくなったら、また言ってくれるっスかね。

名残惜しさを残したまま通話終了をタップしようとすると、手袋をしているにも関わらず指がかじかみそうになっている事に気付く。

みわと話してると、体温が上がったような錯覚になるから不思議なんだよな。

こりゃ、みわの言う通り早く部屋に入った方が良さそうだ。



大きな音を立てないように、窓を閉める。
結露の多さが、外の寒さを表していた。

さて、無事にみわと電話越し年越し出来たし、寒かったからなんかあったかいもんでも「終わったんかよ」

「び、ビックリした! 笠松センパイ、起きてたんスか!」

突然暗い部屋の中から話しかけられて、飛び上がりそうなほどに驚いた。
いや、実際ちょっと足が宙に浮いた。

「元々そんなに酒に弱くねえし。ちょっと寝たらスッキリしたわ」

左右に首を動かしてストレッチするのは、コートの中と同じだ。

「なんかあったかいもん淹れます」

「おう、頼む」

オレ達が声をひそめる事なく話してても、他のセンパイ達は目覚める気配すらない。

相変わらずの大音量のイビキの合間に、お湯を注ぐ音が優しく響いた。


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