第23章 夏合宿 ー最終日ー
……しまった。
席のことまで考えて乗るべきだった!
まあ、バスの座席ぐらいでブーブー言うほど子どもじゃないっスけどね。
…………
でも、みわっちの隣が良かったっスわ……。
笠松センパイ……女子苦手なのにみわっちは平気だからって、ズルくないスか?
車内は殆ど寝静まった状態。
みわっちとセンパイの話し声が聞こえる。
「神崎、何書いてんだ?」
「あ、これは自分のノートです。今回の合宿の反省点とかを、今のうちにちゃんと書き留めておかないとと思って」
「オマエ……こんな時くらいちゃんと休めよ」
「違うんです、帰ったらすぐ寝てしまいそうだなって思って」
「まあいいけどな。あんま下見てっと酔うぞ」
「ハイ、すぐ終わらせます」
「……きーせ」
2人の会話に集中していたからか、反対側から呼ばれている声に全く気付けなかった。
「あ、すいません小堀センパイ、何スか?」
「いや、笠松のことを羨ましそうに見てるな、って思ってさ」
見透かされてる。
小堀センパイはよく見てるっスね……
「笠松は下心持ってどうこうなんて考えないから、安心しなよ」
「……別に気にしてねえっス」
そういう問題じゃないんスよ。
近くに居て欲しくないんスよ。
オレの近くにだけ居ればいいんスよ。
オレ、ソクバクって一番嫌いだったのに。
なんだこの気持ち、おかしいな。
「オイ黄瀬ェ……」
今度は笠松センパイの方向だ。
振り向くと、顔を真っ赤にしたセンパイがこちらを向いている。
「なんスか、笠松センパイ?」
「おま、オマエちょっと、代われっ……」
センパイの肩口を見ると、寝顔のみわっち。
可愛い顔して寝てる。
……けど、センパイの肩にもたれかかるなんていけないコっスね。
「代わるっス」
センパイの肩に寄せられているみわっちのほっぺたに手を差し入れ、笠松センパイから離す。
その間にセンパイが急いで席を立ち、オレが代わりにセンパイの席に座った。
みわっちの頭をオレの肩に寄りかからせる。
全く、自覚ないのも困りモンっスね。
こーんな可愛い顔で来られたら、普段大丈夫なセンパイだって無理っスよ。
思わずおでこにキスをする。
オレのみわっち。