第78章 交錯
自分なりに、分析してみた。
どうしてこんな特技が身に付いたのか。
ひとを動かすのは、"感情"だ。
感情が、全てに現れる。
行動、表情、発言。
多分、それを読み取るのが得意になったって事なんだろうけど……。
それはきっと、涼太のおかげ。
"恐怖"の方向へしか動く事のなくなってしまった私の感情を、涼太が動かしてくれたから。
海常の皆も、あきもそう。
喜んだり、悲しんだり、悔しがったり、そういう日々の感情の動きが、私を磨いてくれたんだ……と結論づける事にした。
『いや、いいんだ。逆に、そんなスーパー能力を身に付けていたらどうしようかと思っていたところだよ』
アハハとからかうようにして話していたマクセさんの声が……引き締まった。
『とある大学のチームで、トレーナーの補佐をやってみないか? 期間は限定……インカレ終了までだ』
大学のチーム。
涼太達が戦って居る舞台だ。
『交通費もこちらでもつ。暫くは隔週であちらさんに行く予定だが、大会が近くなればもっと頻繁に出向く事になるだろう』
願っても無い話だ。
ただの大学生が経験など出来るわけのない話。
「是非……頑張らせて頂きたい、です」
かなり資金力のある強豪校なんだろう。
やってみたい。
自分に何が出来るのか、試してみたい。
ただ……
気になっているのは、どの大学か。
マクセさんの口からは、まだ大学名は出ていない。
『黄瀬君とは相変わらずか?』
突然のその名前に、心臓がドクリと飛び跳ねる。
名前すらも、愛しい。
「あ、はい……お陰様で」
なんと便利な言葉なんだろう、"お陰様で"。
マクセさんは、またクスクスと笑った。
『ふたりがまだ続いてくれていて、安心したよ。
だが、この依頼の学校は、大阪の学校……来年度インカレ優勝候補、間違いなく黄瀬君のところと当たるだろう。それでもいいのか?』
人生とは、選択の連続だ。
その言葉が、胸にずしりと響いた。