第78章 交錯
「なんか久しぶりにセンパイ達に会えて嬉しいっス」
皆でカラオケしながらでも……なんて最初は言ってたらしいけど、森山センパイの発案で、ウチに押しかける事になったらしい。
……なんだかんだいっても、今日は1人寂しく年越しする予定になっちゃったから、嬉しかった。
「俺や小堀とはいつも会ってるけど、他のメンバーは久しぶりだろ。オマエ、友達いなそうだし」
「いるし! ひどいっス!」
笠松センパイにそう言われてふと高校時代を思い出したけど、確かにみわを除けば同級生よりもセンパイ達と居た時間の方が長かったな。
いや、でも友達いるし!
面倒で連絡取ってないヤツばっかだけど、いるし!
バスケ部のメンバーとは、いまだに頻繁に連絡取るし!
「今日は神崎とは会わないのか?」
「うっ……笠松センパイ、今日のオレにそれは禁句っス……」
アハハと起きる笑いに(笑いごとじゃねえんスけど!)混じって、プシュプシュと小気味良い音が響く。
センパイ達の手には、缶ジュース……ではなく、缶チューハイや缶ビール。
「オマエは飲むなよ。未成年なんだから」
笠松センパイがジロリとオレを睨む。
「押しかけて来て、皆だけで楽しく酒盛りってズルくないスか!」
「そうだぞ、早く大人にな(れ)、黄瀬!」
「早川センパイ、"そうだぞ"の使い方間違ってますし!」
「黄瀬、俺はさきいかが食べたいぞ」
「おつまみなんてないっスよ! 森山センパイ、なんでお酒と一緒に買わなかったんスか!」
「いやー、高校時代に戻ったみたいで楽しいなあ」
「小堀センパイ! ヒトゴトだと思って! 中村センパイ! なんか言ってやって下さい!」
中村センパイは、ちらりとオレを見ると……すっくと立ち上がった。
「……トイレ借りるわ」
「もー! 皆自由すぎっス!」
でもやっぱり、不思議と居心地いいんだよなあ。