第78章 交錯
「インフルエンザ!?」
『うん、ごめんね……おばあちゃん、今日急に熱が出ちゃったから救急センターに行ったらね、インフルエンザだったの』
今日は12月31日、大晦日の早朝。
電話口のみわから、まさかの単語。
「大丈夫なんスか、お祖母さん」
高齢の病気は怖い。
大丈夫なんだろうか。
『うん。おばあちゃん、ちゃんと予防接種打ってたから、重症化は防げるって。ただ、何日かは外に出られないけど……』
驚いた。
予防接種なのに予防出来てないじゃねえスか。
いや、そもそも予防接種のコト、よく分かってないっスけど……。
そんなツッコミをしそうになったけど、今はそんな事言ってる場合じゃなくて。
『ごめんなさい、涼太。暫く、会えなくなっちゃう……』
「あ、そう……っスよね」
みわは昨日からお祖母さんのトコに行っていたらしい。
流石に、ホイホイと会っちゃまずいよな。
すげえ会いたいけど、そこの分別は出来てる。
「仕方ないっスね。みわも、うつらないように気を付けて」
『うん、ごめんね。……ごめんね、涼太』
「みわのせいじゃないっしょ。謝らないでいいんスよ」
謝り続けるみわを宥めながらも通話を終え、天井を仰ぎ見た。
マジっスか……
あれが、年内最後のみわだったとは。
クッソ、マジでインフルエンザ空気読めって感じっスわ……
ぐ、と握り締めた手の中で、新たな振動。
着信だ。
あまりのショック状態に、ロクに画面も見ずに通話をタップする。
「モシモーシ?」
『黄瀬か? 悪いな突然』
「……森山センパイ!?」
それは、懐かしい声で。
「……で、なんでこうなってるんスか」
オレのワンルームが、男で埋まってる。
目の前には笠松センパイ・小堀センパイ・森山センパイ・早川センパイ・中村センパイ。
テーブルは部屋の中央に移動されて、カセットコンロの上にはデカい鍋が置かれて。
「いや、久しぶりに皆で年越しをしようという話になってだな、それなら寒いし鍋がいいんじゃないかという事になった訳だ」
「今の流れで、会場がウチになる理由が全く分からないんスけど!」
残念なイケメン、森山センパイは相変わらずだ。