第77章 共栄
トーストの焼ける香ばしい香り。
ジュージュー音を立ててるのは、スクランブルエッグとウィンナー?
鼻腔から侵入してくる良い匂いに反応して、腹がグルルと鳴った。
そしてオレの前には、フライ返しを持った……あきサン。
「で、みわは?」
「…………寝てる、っス」
「何時に寝たわけ?」
「……さっき?」
「……」
「……」
「あたし、あんたの為に朝ご飯作ってるんじゃないんだけど」
「そう……っスよね……」
ぐうの音も出ない。
結局朝まで抱き潰すとか、何やってんだ。
「何飲むのよ」
腕を組んで見下ろしてくる視線は、女帝だ。
物凄い迫力で睨んでくる。
寝不足の頭には刺激が強い。
しかし、女帝も朝は優しいらしい。
飲みたいもの……やっぱ目が覚めそうなものがいいか。
「ん、じゃあコーヒー」
「贅沢言ってんじゃないわよ。牛乳飲んどきな」
「じゃあなんで聞いたんスか! 今!」
スタンと叩きつけられた牛乳入りのコップを傾けると、爽快感が喉を突き抜けた。
「あんたさ、セックス依存症なわけ?」
思わずブッと吹き出しそうになる。
それをやったら間違いなく一発退場だろう。
あぶねー。
相変わらず直球すぎる物言い……だけど。
「いや、それはないと思うっス。どっちかってーと、濃いセックス嫌いだったし」
「全く説得力も信憑性もないんだけど」
……そうっスよね。
「ま、セックスっていうより……みわ依存症?」
「知ってる」
だめだ。
会話にならない。
ってかあきサンすげー怒ってる。
だって、みわがメチャクチャ可愛いんスもん。
涼太、好き、気持ちいい、って……やめられるわけ、ないっスわ。
「あんたがそんな束縛男だと思わなかった」
「ん、それは自分でもびっくり」
昨日は……すげーワガママ言った。
ワガママ言って、言われて。
それが、嬉しくて。