第77章 共栄
実家にあるのよりは小さめの2ドア冷蔵庫の中は、食材で埋め尽くされていた。
男の1人暮らしとはまた違うようで、ちゃんと自炊している証拠だ。
冷凍室が大きめなのも気になる。
忙しい2人が、あーだこーだ言いながら決めたんだろうか。
冷蔵室の上からの2段は、みわとあきサンの名前のアルファベットのシールがそれぞれ貼られてる事から、ここに置いてある物だけは個人の物で、あとは共有、という形をとってるんだろう。
みわの段に置いてあった、ミネラルウォーターのペットボトルを手に取った。
キッチンもキレイに片付いてる。
さすが女のコ。
……みわと、暮らしたい……
頭の中ではそんな計画ばかりが浮かんで。
部屋に戻ると、みわが起き上がっているのが目に入った。
真っ暗なのが苦手らしいみわの部屋は、寝る時も間接照明をつけるから、結構室内は明るい。
その表情が穏やかな様子を見て、ホッと安心した。
「みわ、起きたんスね」
「うん、ごめんね……寝ちゃって」
いやいや、そもそもオレがイジワルしたんだけど。
「少しでも眠れたなら良かったっス。水、貰っていい?」
「うん。涼太、身体は大丈夫?」
フラフラなみわに言われても……。
だから、オトコは出してダルく感じる位だってば。
「オレはメチャクチャ元気。何回戦でもいけそうっス」
「う、いや、それは……」
ラベルをよく見てみれば、オレが好きなミネラルウォーターだ。
もしかして、オレの為に……買ってくれた?
ひとくち飲んで喉を潤すと、みわにも口移しで……なんて思ったけど、絶対に2回戦をしたくなるから、やめた。
ボトルを手渡すと、みわもゴクゴク喉を鳴らし、ぷは、と小さく息を漏らした。
「あ、のね涼太……お願いがある、の」
「うん、何?」
「あの、その荷物の中に入ってる、長袖のTシャツを1着貸して欲しいんだけれど……」
みわは、オレが持って来た荷物を指差してそう言った。
「ん?」
どういう事っスか?