第77章 共栄
「そ、んなの……」
それは、私の台詞だ。
涼太が居てくれなかったら、私は今ここに居るかも分からない。
過去にも現在にも未来にも絶望して、もしかしたらこの世にいなかったかもしれない。
全部、涼太のおかげ。
涼太の力。
「私、お礼を言われるような事、なんにもしてないもん……涼太が居てくれたから。私が今、頑張れてるのは、涼太だからだもん……」
他の誰にも代わりは務まらない。
涼太だから。黄瀬涼太だから。
「ありがとうは私が言いたいよ、涼太。本当に、ありがとう……」
細くなる声は、優しく落とされたキスに受け止められた。
「ね、みわ。みわはさ、自分を大切にするって事がどういう事か分からないって、悩んでたじゃないスか」
「……うん」
……分からない。
他人を思いやる、大切にするって言葉はすんなりと理解出来るのに、自分を大切にするって事がどういう事だか、分からない。
誰かの……大切なひとの役に立てるなら、自分なんか別にどうでもいいのに。
それは間違っているの?
「オレもさ、難しいコトは分かんない。みわが納得するような説明してあげられる自信、ないっスわ。でもね、これだけは約束して」
「……?」
「みわがこの先迷ったり悩んだりした時は、みわが嬉しかったり、楽しかったりする方を選んで欲しいんス。
自分がしたい事に、正直になって」
「したい……事に?」
嬉しかったり、楽しかったりする選択肢を選んでいけばいいの?
自分がしたい事を選んでしまっていいの?
でも
「そんな自分勝手なこと……」
「みわ。いい? それは"自分勝手"とは言わない。
言ったでしょ。みわの人生は、みわの舞台。自分の舞台は自分がシナリオを考えて、全力で演じないとダメなんスよ」
考えた事もなかった。
人生は、自分が主役の舞台。