第77章 共栄
結局、涼太は何を伝えたいのかという、この言葉たちの真意が分からなくて、気が付けば凄く難しい顔をして話を聞いてしまっていたんだと思う。
普段ならそのままキスをしたり……その先までしているような体勢と距離で話しているものだから、心臓は全く落ち着かないし、なんだか不思議で。
「あー……ごめん。いきなりこんな話したら、ナニ言ってんのって感じっスね。赤司っちや黒子っちみたいに上手く話がまとまんなくてさ」
ぽりぽりと頭を掻く姿は、まだどこか幼い表情が残っていて、出逢ったばかりの頃を思い出す。
器用な彼の、数少ない不器用な部分。
あ、絵を描くのも苦手だったんだっけ。ふふ。
「オレ、こーいうのあんま得意じゃないんスよ。何言ってんのか分かんなくなって、オロオロするっスわ」
オロオロ?
私の専売特許みたいなその単語。
笑っちゃうほど、涼太には似合わない。
「そうは、思えないんだけど……涼太が慌ててるのって、あんまり想像出来ないよ」
「いや、うまくごまかしてるだけだって。みわを抱いてる時なんて、頭おかしくなる寸前なんじゃないかってくらいテンパっててさ」
……テンパってる?
それこそ、目から鱗。
あんなに余裕なのに?
「ああ、そーじゃなくて! 今話そうとしたのはそーいうんじゃなくて。
まずはみわに、ありがとうって言いたくて」
「私に……?」
トントン拍子に進んでいく会話に、また置いて行かれそうになってる。
私が感謝される事なんて、何もないのに。
「みわが居てくれて、オレ本当に嬉しいんスよ。
そのヒトを想うだけで楽しくなれるって、最高でしょ?」
そのひとを想うだけで楽しくなれる。
「みわにこれプレゼントしたら喜んで貰えるかな、次はいつみわと会えるかな、みわ、元気してるかなって……会えなくても、そう考えるだけで幸せになれるんスよ」
うん、分かる。
その気持ちは、すごく良く分かる。
「みわは、生きてくれてるだけでオレのチカラになってくれてる。
みわ、ありがとう」