第23章 夏合宿 ー最終日ー
朝、ベッドで恋人に飲み物を口移し。
この間観た恋愛映画でやってて、やってみたいっスね〜なんて思っていたけど。
みわっちはオレにしがみついて感じちゃうし、オレはオレで興奮しちゃうし。
映画の中の俳優のような、スマートな2人の行為とは程遠いものだった。
でも、こんなのが心地よい。
かっこ悪いオレをこれ以上見せたくはないけど、お互いが素顔でいられる関係は幸せだ。
「もうッ、大丈夫……あ、ありがと。シャワー浴びてご飯食べて来なきゃ」
顔をリンゴみたいに赤くしたみわっちが、ストップをかけてしまった。
一気に現実に引き戻される。
今日は地獄の合宿最終日だ。
惜しみながらもみわっちとは別れて、部屋に戻ることにした。
「おう黄瀬、オハヨ。お前、昨日部屋いたか?」
森山センパイは起きるのが早い。
うっかり洗面所で会ってしまった。
「オハヨーゴザイマス……あー、まあ」
「……合宿前に笠松と3人で話してた事態になったわけじゃないよな……!?」
「な、なってないっスよ! 最終日、気合い入れていくっス!」
……昨日のは、セーフっスよね?
ほら、入れてないし……。
「……ふ〜ん、そうか……」
森山センパイは笠松センパイよりもこういう事に敏感だからな……。
別に隠してるわけじゃないんスけど、色々突っ込まれて聞かれるのは、センパイたちだとしてもやっぱり好きじゃない。
ふと昨晩の光景が頭によぎるが、切り替えていかなきゃ。
なぜか今朝の食事は、前日までのものより美味しく感じた。
「おはようございます。今日の予定です。
ご存知の通り、今日は19時まで練習、その後は全員でバス移動、帰宅します。明日は、午後からの練習になりますので注意してくださいね」
みわっちが食堂に来て、オレたちにそう告げて去っていった。
いつも通り、あんな事があったなんて微塵も感じさせない彼女。
女はやはり女優だなと思う。
こんなに理性的なみわっちなのに、ベッドではあんなに乱れてしまう、あのギャップがたまらないんスよね。