第77章 共栄
「オレがさ、食事もロクに取らずにバスケの練習してたらどうする?」
みわは、ギョッと目を見開いて間髪入れずに。
「それはダメだよ! 食事は全部の資本になるんだから、何があってもそこだけは削っちゃいけないところで」
「はいそれ、そのまんまみわに返すっスわ」
「……私とは場合が違うよ……」
うーん、どうして自分だけ別になってしまうのだろう。
世の中には、悪い意味で自分だけが特別と思っているヤツらばっかりだけど、みわにはもう少しだけ、そういう気持ちも欲しい。
「違わないっしょ、なんにも。
みわはヒロインなんだから、自覚持って欲しいんスけどね」
「ヒロイン……?」
あー、そのぽかんと口を開けたカオ、好き。
ぱくんと食べちゃいたいっスわ……。
「うん、オレの人生のヒロイン」
「い、意味が」
困ってアワアワどもるのも好き。
ほっぺたが真っ赤なのも好き。
「人生って、主役が自分のドラマでしょ? みわはそのヒロイン役なんスよ」
そう。人生はオレだけのドラマだ。
だから、やりたい事を、やりたいだけやる。
一緒に居たいと思えるヒトと、生きる。
「ねえ、みわ。オレはね、みわが大切なんスよ。大事なの。みわが泣いてたら悲しくなるし、笑ってたら嬉しくなるんス」
みわは、少し不安げに瞳を揺らして、オレの次の言葉を待っている。
「みわが傷付いてたらツラい。でもそれ以上に、その傷をオレが癒してあげたいって、そう思うんスわ」
さっきの顔。
全てを諦めたような顔。
あんな顔、させたくない。
「だからさ悪いけど、これからもみわにはずっと伝えていくから。オレの気持ち。身体にも、こころにも」
ゆっくりと、唇を合わせる。
「ん……、っ」
戸惑いながらも受け入れてくれる柔らかい果実を、軽く食んだ。
「受け止める覚悟、して」
離さないから。
絶対。