第77章 共栄
ぽろり。
ぽろり。
みわに対する気持ちが溢れてくるのが、止まらない。
虐待を受けていた子どもは、自己評価が低くなるというか……"自分の存在価値"が見出せなくなってしまう事が多いらしい。
みわは、まさにそうだ。
彼女は、自分の価値が分からない。分かっていない。
どれだけ伝えても、"実感"として彼女の中に残っていかない。
酷い性的虐待の経験がそうさせてしまっているのかもしれない。
分かって欲しい。良いところも、ダメなところもひっくるめてみわなんだって。
オレが好きなのは、愛してるのは、誰よりも優しくて、繊細で、強くて、美しい神崎みわだ。
みわは、自分が100%しっかりやらなきゃ、周りから見捨てられてしまうという恐怖をいつも感じてるんだと思う。
それはきっと、母親の影響。
本人は意識しているのか、無意識のうちなのかはオレには分かんないけど。
でも、だからと言って諦める必要はないんだって。
自分を認めてあげて、大切にする事が出来るようになるのは、後からでも可能だって。
身近な人間の協力で、修復可能な傷なんだって。
だからオレは、何度でも言う。
みわが、オレに愛されてると自信を持って言えるまで。
みわが、自分自身を大切にする事が出来るようになるまで。
「みわはさあ、自己管理が全然なってないんスよねえ」
途中まで甘かった空気をぶち壊すようなオレの発言に、みわは目を丸くしてる。
大きな瞳が、コロンと落っこちてしまいそうだ。
「すーぐ睡眠時間は削るし、死なない程度の最低限しか食事はしないし、マジであきサンと同居してなかったら、死んでるかもしんないっスよ」
「う、う……」
ぐうの音も出ないってカオ。
「でも、分かるんスよ。
みわは、全身全霊で目標に向かってる。
オレだって、負けてらんないし」
みわは、オレの発言の意図が分かってないみたいだ。