第77章 共栄
「箱にしまっとこ」
ふたりとも、とりあえず箱に入れておくことにした。
どうしようかな、グラス……飾ろうか、使おうか。
悩む……
そんな中、天気予報が終わって、次にテレビに映し出されたのは……ドラマ。
二夜連続再放送、本日完結編と書かれている。
恐らく主演の女優さんであろう女性が、アップで映される。
テレビでよく見かける有名なひとだけれど、名前までは分からない。
「あ、これ、姉ちゃんが好きって言ってたヤツの再放送っスね。なんかラストが感動するから見ろ見ろってさ」
「そうなんだ」
「オレは前に1回見たことあるけど、ハッキリ覚えてないんスわ」
ちょっと気になって、途中からだけど残り1時間ほどだし、見てみようという事になった。
「コーヒー、ありがとね」
「……インスタントでごめんね」
「んーん。美味い」
部屋がコーヒーの良い香りに満たされて、気持ちもなんだかホッとする。
ドラマは、ふたりの男女が苦難を乗り越えながら愛を深めていくというもの。
CMの間に涼太に補足して貰ったところ、どうやらご両親からも反対されているみたい。
更に、ライバル役やらなんやら……と、次々ふたりの前に立ちはだかる障害。
それが、お互いを想う強い気持ちと、周りの人たちの協力を得て、少しずつ解決していく。
何があっても決して諦めない姿が、ジンとくる。
どうか幸せになれますように。
思わず息を止めて見ていた。
その時、玄関から、カチャリと静かに鍵をかける音。
普段なら大声でただいまと叫ぶ声がない。
あきが、私たちに気を遣って帰って来たのが分かる。
「おかえり、あき」
変に気を遣う必要はない事を伝えたくて、ドアを開けて声をかけた。
「あ、まだ始めてなかったんだ。ただいまー」
……"何を"というのは聞かないでおこう。
「あ、あきサン、メリクリー。お邪魔してるっスよ」
「はいはい、ほどほどにねー」
あきはそれだけ言って、自分の部屋へと行ってしまった。
ドラマ見てるだけなのに……。